君の檻から出されたなら。



それを聞いた彼女は俺から目を逸らした。


「――…そうよね。
私にそんな幸せな結末…あるわけがないもの」


そう笑った彼女は今にも消えてしまいそうなほどに儚くて。



俺は立ち上がり紫羽に近づくと



「………っ…」


できるかぎり優しいキスを落とした。



「…………」


唇を離すと、お互いの鼻が擦れるほどの距離で紫羽は微笑んだ。


「……優しいのね」




「…君のしつけがいいんだ」


俺が冗談ぽく笑えば、彼女もふっと笑った。







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―――――――…………



その日もいつも通り、
紫羽が本を読む隣で俺は空を見上げて。


空だって変わらず澄んでいたんだ。