夕暮れ色に染まった部屋の中、
俺の口内で彼女の舌が動く音が響く。
そのまま、頬から首筋に落ちた彼女の手で俺の体は押し倒された。
「………は…ぁ…っ」
彼女のキスは、溺れそうになるほどに心地良いものであって。
俺を拾ったその日も、近づいてきて急に俺の口を塞いだんだ。
―…寒く狭い通りの隅で。
「―…っ………」
やっと唇が離れる。
「刹は…私のキスが好きでしょう」
悪戯に笑う彼女も魅力的だ。
「………」
自分だけ息があがっているのが嫌で、冷静を装いながら彼女を見上げれば
彼女は俺を見下ろして柔らかく笑った。
細長い指で俺の唇をなぞり
また顔を近づける。
「……?」
またキスをされるんだと思い込んだ俺は、鼻が触れる以上近づかない紫羽を不思議がる。
すると、クスリと笑う紫雲。
「あなたからキスしてみて?」

