僕がこれから生活するのは『蘭藤荘』と言う名の寮。

元々は観奈の母親の弟、藤岡慎太郎が持つ私立北洋高校の教師用の寮らしいが、入居人が少ないらしく、空いている部屋を僕が使っていいそうだ。

僕は荷物を持って、自分に与えられた部屋へと向かう途中、人とすれ違う。

パッと見た感じ、僕より年上。しかも金髪で青緑がかかった瞳の男。

…日本人ではない、よな?

そんな事をふと思ったその時。

「君!」

後ろから声がして僕が振り替えるとすれ違った金髪の男が僕を見てニコニコしている。

「君が今日からこの寮に来ることになってる藤岡理事長の知り合いの子かな?」

「…え?あ、はい。そうです。」

そう答えると、金髪の男が僕に駆け寄ってきた。


「やっぱりそうか。俺は早瀬大和。北洋高校の教師でこの寮に住んでいる。」

金髪の外国人かと思ったけど、よく見たら日本人じゃないか。もしかしてハーフかな?

「あ、あの。僕は菅谷彼方と言います。よろしくお願いします。」

「ああ。これからよろしくな。」

早瀬さんはそう言って僕に右手を差し出した。
その手を僕は反射的に握った。

「俺は菅谷君とは違う棟の建物に住んでるから、何かわからないことがあればいつでも俺の部屋を尋ねてきてくれ。」

早瀬さんは『それじゃあまたな。』と僕に軽く手を振ると、蘭藤荘の外へと出掛けていった。

早瀬さんか…。

初対面の僕にとても親切だった。
初めは金髪だし、少し威圧感を感じたけど、あの笑顔みたらそんな印象一気に吹き飛んだよ。

それが僕と早瀬先生の出会いだった。