その時だった。ぐらついていた世界が勢いを増した。強い衝撃が俺を地面に投げ出す。頭がズキズキする。体が動いてくれない。誰かの叫んでいる声。悲鳴。俺はやっとの事でうっすらと目を開ける。目の前にあるのは雪。その雪は、視界の中で鮮やかな真紅に染まる。その生暖かい赤は、じわじわと白銀の雪を溶かしていく。自転車のキィ、キィとタイヤが軋む音が耳に届く。俺は状況を理解した。