俺はもしかしたら

俺は、新聞社に勤めるごくごく普通の会社員。

名前は和田一真。二十二歳。

特にこれといった実績もなく、本当に平凡な人生をおくっていた。

だがそんな俺にも夢と呼べるようなものはいくつかあった。

例えば俺は小さい頃からパイロットになりたいと思っていた。だけど、夢はやっぱりただの夢で、パイロットになれるはずもなく俺は普通の高校へ進学、普通に卒業し自分のレベルで入れる大学へなんの苦労もなく入学。そして卒業。


今の新聞社にいる理由も、家がさほど遠くない事と、特に力仕事もない事。俺の中では楽な仕事として分類されたから。今思えば、なんて抑揚のないつまらない人生を送っていたのだろうと思う。でもそのときの俺は、ただ面倒くさいことは避けて、目立たず、それなりに楽しくて普通の生活を送ることができれば、



それが人間にとって一番幸せなことだと思っていた。だから、後悔など一ミリたりともしてはいなかった。



このまま普通に過ごして普通に年をとって、そのまま死ねればそれで充分。人生なんて、なんて軽くて取るに足りないものだ。そんなもんだと思っていた。