「そこが彼女のいいところなんだけど」
自分のことのように話してるのは俺のセンサーにバッチリ引っ掛かる。
「りおが好きなのか?」
「はい?」
「いや、なんでもない」
聞いてどうすることもかないのにうっかり口にしてしまったことを後悔した。
そのまま歩き出す。
「大神さん、俺は昔にフラれてるんで安心してください」
「あ?」
振り向くとそいつはきれいに笑って見せていた。
「俺は前にフラれてるんで安心してください」
フラレてる?
りおに樹がフラレてるのか?
驚いてると樹が微かに笑った。
「りおは自分で気づかないだけで、大神さんのこと好きなんですよ。きっと」
―――俺のことが好き?
まさか。
そんなことない。
俺はりおを傷つけた男だ。
「悔しいからあと教えません」
そう言って樹が踵を返して戻っていった。



