「ホレた女ですか?いますよ」
「は?」
「いますよ」
「…相手は?」
「内緒です」
まさかりおじゃないよな。
「まあ、わたしの片思いなので想いは墓場まで持っていきます。でも、ホレた女に似たひとを見れば心は揺らぎますね」
「…それは」
りおじゃないよな?
「内緒です」
「………」
いっぺんに酔いが醒めた。
榊がその手の話をすることは今までなかった。
俺が興味がなかっただけかもしれないが、訊ねたこともなかった。
顔には出ないが珍しく榊が酔っているような気がした。
「俺の知っている女か?」
「内緒です」
「まさかりおじゃないよな?」
「さあ、内緒です」
俺の顔色が変わったことに気づいたのか、ふっと顔を上げて笑った。
「今夜は飲み過ぎましたね」
そう告げて酒のビンを振って見せた。
―――榊、おまえは誰を愛してる?



