「若の気持ちには彼女の方は全く気がつかないようですけどね。
夜の街で遊んだ若がたったひとりの高校生を目の前にすると指一本も触れることもできずにいるなんて、
派手に遊んだ若を知ってるひとなら誰でも驚くでしょう」
くっくっと榊が声を押さえて笑う。
「そんな可笑しいか?」
「ええ、十分可笑しいです」
「毎晩違う女を抱き、女には執着しないだろうとばかり思ってたので、りおさんの言動のひとつひとつに一喜一憂してる若を見ると、可笑しいっていうより切なくなるというか、どうにかしてやりたいというか」
「そんなもんか」
「ええ、そんなものです」
榊と話していると、いかに俺が今まで女に興味がなくて快楽のためだけの行為をしてきたのかと認識させられる。
「りおさんが現れた日を境に若は変わりましたね。自分のことは二の次になって」
「………」



