「…―ああ、苛々する」 今夜も、うろついていた繁華街の途中で足を止め、時任渉はスーツのポケットに手を突っ込む。 指先に触れるのはライターと煙草の箱。 「くそっ、あのヤロウ」 時任渉は煙草を口にくわえながら、上司に対する怒りを顕にする。 今日は特にひどかった。 時任渉が犯した失敗は単純な表計算の間違い。 計算式自体は間違っていない。 ただ自動計算の設定が掛かっておらず、プリントアウトした書類が未計算のままだった。