俺はそれでも振り返らなかった
「そうやって自分の気持ち圧し殺して冴慧と向き合わなかったら2人とも傷つくだけだよ?」
唇を噛み締めてただ前に足を進めた
綾瀬はいつも俺の心の1番痛いところに踏み込んでくる
核心をついてくる
俺は逃げてんのかな
わかってんだよ
わかってんのにさ………
認めんのがこわいんだ
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「冴ぁー慧」
「……波美」
屋上にあがってきたのは波美だった
「………あたしね……」
「言わなくていいよ 何も言わなくていいから」
波美はあたしに笑顔をむけた
「冴慧はあたしが辛いとき笑ってくれたの だからあたしも笑ってあげる」
「……波美」
「言ったでしょ?冴慧には幸せになってほしいって」
波美はあたしの横にストンと腰をおろした
「冴慧はさ………なんでここにいるの?」
「え?」
「なんで南波君のこと追いかけないでここにいるの?」
「それは…」
あたしは俯いた
陣を追いかけれなかったのは陣の気持ちを知ってしまったから
波美はそんなあたしをみて冷めた口調で言った
「こわいんでしょ」
「え?」
「自分の気持ちに素直になるのがこわいんでしょ」



