夜は短し、登れよ乙女!



「さて、そろそろ中に入ったほうがいいよ」


急に言われたそれは、この時間を終わらそうとするもの。


「…どうして?」


何故か、すがる自分がいた。


「僕もう行くから」


「どこへ?」


「幼なじみんとこ」



幼なじみ


その単語に少しだけ親近感を覚えた。



「そっか」


「うん。じゃあね」


「あっ…!」


いきなり視界から消えた。


ふっと居なくなった光景は、『消えた』という表現がぴったりで。


周りを見渡しても、あの長い髪は見付けることができなかった。



まるで夢だったようにも思えるけれど。



「月までの距離、38万4400キロ…」



空までの距離、2メートル。





END