「さあ、教えてあげる。どの星がいいの?」
「教えてあげるって…」
冗談であろう、その台詞。
だけれど、何故か本当のような。
「どこでもいいよ。月?火星?ベガ?それとも、ノルディック星…?」
ノルディック星?
聞き慣れない星の名前。何となく、そこが男の子にとって特別な星のような気がして。
「じゃあ…月」
「月でいいの?」
「うん」
月までの距離なんて、調べればすぐにわかるのに。
「地球赤道半径の60倍」
「わかりにくいよ」
まず、あたし赤道の長さ知らないから。
その男の子はあたしの反応を楽しむかのようにクスクス笑って口を開いた。
「38万4400キロ」
「……遠いね」
「そうかな。もっと遠いよ」
何が、だろうか。
「でも君の腕の長さに比べたら、遠いかもね」
「……」
まず比べる対象がおかしくないですか。


