「……ジャンプか」


瓦の屋根の上でジャンプとはなんともチャレンジャーな少女。


そもそもジャンプしたところで届かないのは目に見えているけれど。


「よしっ」


そう気合いを入れて、瓦を蹴り上げようとしたとき、




「危ないよ」



風にのせて、柔らかな声が聞こえた。



「え……」


まさか人がいるなんて思いもしかなったものだから、足に入れた力は行き場を失って、消えた。


「だれ…?」


声がした方に振り向くと月の明かりで人影が見えた。


「さあ…だれかな」


「……王子さま?」


ゆっくりと近付きながら言ったその言葉が間違いだったと気付くのは、その人との距離が大分縮まったとき。


…女の子だ!


色素が薄そうなその髪は、腰までまっすぐ伸びていた。