真ん中辺りまで来て足を止めた。
「……届かない」
手を伸ばしたところで、わかっていた。
自分の腕の長さなんて。
自分家の高さなんて。
銭湯の煙突にでも登ればよかったな…。
そんなことを考えたところでこの辺の銭湯には高い煙突なんてないのだが。
「……時代か」
15歳の少女が口にするとは思えない台詞を呟きながら、もう一度手を伸ばす。
背伸びも追加してみたけれど、やっぱり届かない。
「うー…誰か肩車!できれば高身長のイケメンな王子さまっ!」
王子さまて。
こんな夜では王子さまどころか屋根に登る人もいないだろうに。