「ほれ、座れよ」


いや、ここあたしの家だし


そうは思っても恵吾さんの隣にチョコンと座る


「彼氏となんかあったのか?」


「...あんなの、彼氏じゃないです」


彼氏じゃない、あんな奴


最初から全部...


「じゃあ振られたか、あの男。ざまあねえな」


「...え?」


どういうこと?


「あの男なら梓、守ってくれると思ったんだけどな」


「....」


あの、理解出来てません


どういうこと?


なんで遼平を知ってるの?


「誠人が言ってたぞ。あの男なら梓は幸せになれるって。俺も実際、話してみて思った。あの男も梓に相当惚れ込んでるって。だから信じて梓を預けたんだけどなぁ...」


恵吾さんがあたしの頭を優しく撫でる


いつもこうだ


あたしが落ち込んでると頭を撫でてくれる


恵吾さんは、あたしのお兄ちゃんみたいに接してくれた


嬉しいけど...迷惑をかけてる気がする


「梓、泣きたいんなら泣けばいいんだよ。無理して強がってるから心が苦しいんだよ。辛いなら、泣きたいなら、苦しいなら...泣けばいい」


恵吾さんが優しく抱き締めてくれる


恵吾さんの鼓動が心地よくて...


「...ッー!!!」


声にならない声を上げて泣いた