「梓は知らねえって」


他の連中が言う


何を?


何の話?


「梓には言わない方が良かったんだろうけど...あの男、何回もこのたまり場に来たんだぜ」


「...遼平が...?」


「何回も、何回も頭下げて。梓を解放してくれって。アイツはもっといい女だからって。でも俺にはもったいない子だからって」


「嘘だろ」


酒を飲む手を止めない


今のあたしにはどうでもいい


関係なさすぎるから


「あの男、俺らから見れば一途に見えたぜ」


「...アイツはあたしを見てくれてなかったから。あたしに違う子を重ねて見てたから」


だから遼平はあたしにキスして...


優しい笑顔を...見せてくれたんだ...


そう思うと苦しくて...


「...クソッ...」


「うおっ...梓がキレてる...」


「それだけ梓はあの男に惚れてるってことだって」


あたしは空っぽになった缶を近くに置いて寝転がる


「梓、寝るなよ?」


「わぁってますって」


ちょっと暗くなった空を見上げる


...綺麗だな...空は...


1番星が輝いてる


あたしも...あぁやって遼平の中で輝きたかった


...なぁんてね...