再び大学を通い始めて一ヶ月が経った頃、ようやく大学の生活環境に体が慣れていった。優人の育児との両立は大変だったが、優人の成長を見ることが生き甲斐になっていたため、そんなことは苦痛とも何とも思わなかった。
 大学の学食で昼ご飯を食べていると、秀と美咲が話しかけてきた。
「彩香。ここで一緒に食べて良い?」
「もちろん。どうぞ」
 私は微笑みながら美咲に答えた。
「彩香。やっぱり勉強と育児の両立は大変?」
「大変だよ。でも、日に日に優人の成長していくのが目に見えるから頑張れる」
「そうだよね。今度私たちにも優人君に会わせてね」
「もちろんだよ」
 私たちは昼ご飯を食べながら他愛のない話をしていた。二人とも昼ご飯を食べ終わると、隼人が先に立ち上がった。
「もうそろそろ教室に向かわないと、講義に遅れるぞ」
「本当だ、もうこんな時間か。急がないと……」
 私は急いで食べ終わった食器を片づけて、秀たちの後を付いていった。
「じゃあ、俺はあっちの教室だから。じゃあな、彩香」
「秀たちも講義頑張ってね」
 秀たちに手を振って別れると、次の講義の教室に向かった。教室に入ると前の方の席しか空いてなかったため、仕方なく前の方の席に座った。
 講義が終わると、私は急いで帰路についた。優人はまだ小さいので、大学が終わると急いで帰らないといけなかった。そのためほとんど遊ぶ暇なんてなかった。
 勉強と育児の両立という毎日が続き、私は大学二年生になった。そして優人も幼稚園に入園することになった。
「優人、やっと幼稚園に通えるね。楽しみ?」
「楽しみ」
 優人はまだ三歳なので簡単な単語でしか会話できないが、それがまた嬉しく思う。
 入園式に出席するため、私は大学を休んで優人が新しく通う幼稚園に向かった。
 幼稚園に着き入学式会場に入ると、すでに多くの母親が来ていた。全体を見回すとチラホラ父親も来ていた。
 こういう時に修二がいてくれたら……、私はふとそう思った。修二がいなくなってしまってから約一年が経とうとしているのに、未だに私の心の中に修二が現れる。
 それでも私は最近、修二の死をちゃんと受け止められるようになっていた。