君を愛する

「何頼もうかな。俺腹減ってるんだよね。彩香も何か頼むか? 俺が奢ってやるよ。彩香も腹減ってるだろ?」
「本当に? じゃあ何頼もうかな。修二は何にする?」
「んー、俺はスパゲティのミートソースにしようかな。彩香は何にする?」
「そういえば修二ってスパゲティのミートソース好きだったっけ。じゃあ、私はこのハンバーグにしようかな」
 修二は、「分かった」と言って店員を呼び注文をした。
「彩香と二人きりっていうのも久しぶりだよな。昔は色々とお互いに相談とかし合ってたな」
 修二は少し寂しげな顔でそう言った。
「うん、昔は色々なことがあったね。でも、それがあってこそ今の私たちがいると思う。それに、そういうことがなければ私たちはここまで何でも話せる仲になれなかったかもしれないしね」
「それはそうかもしれないな。でも、久しぶりの二人きりなんだからさ、こんな話はやめようぜ」
 修二は微笑みながら言った。私は、「それもそうだね」と短く答えた。間もなくして注文したものがきた。注文したものを食べながら、時間を忘れて他愛のない話をしていた。
「もうこんな時間か。さすがに帰らなきゃ彩香の親が心配するな。もうそろそろ帰ろうか」
「うん、そうだね。今日は修二と色々話せて良かったよ。久しぶりに修二とこんなに話した気がする」
「そうだな、最近は誰かと一緒だったからな。じゃあ、帰ろうか。彩香の家まで送ってやるよ。彩香の親に挨拶していきたいし」
 私は小さく頷き、修二が会計を済ませてから店を出た。店を出てから二人はほとんど無言だった。そして、急に修二が喋りはじめた。
「なあ、彩香。俺は心の拠り所が彩香しかいないと思ってる。もちろん、秀もいるし、美咲も里穂も愛恵だっている。でも、彩香が一番俺のこと理解してくれていると思うし。彩香、俺の前からいなくなるなよ……」
 修二が悲しげな顔をしながらそう言った。急な話に私は少し戸惑ったが、すぐに答えた。
「大丈夫だよ。私は絶対に修二の前からいなくならない。修二はもうそんなに頑張らなくても良いんだよ」
修二は今にも泣きだしそうな感じだった。私は続けて言った。
「修二、あそこの公園に寄っていこう。話したいことがあるんだ」
 修二は小さく頷いた。そして公園に着き二人はベンチに座った。