修二の余命が長くないと知った日から数日後、私は再びおばさんに呼び止められた。
「彩香ちゃん、私修二に全部明かすことにした。修二の病気が末期状態で治療の施しようがないこと、そして残りの余命が長くないことも全部、修二に言うことにしたの。やっぱり、修二にとっては何も知らないで死んでいくのは不本意だと思って」
「そうですか。修二は強いので、その事実はちゃんと受け止めてくれると思います。それに、自分自身でも残りの余命は長くないと分かってると思います。おばさんが思ってるほど、修二は弱くないですよ」
 私は無理やり笑顔を作って、おばさんを励まそうとした。それは、自分自身にも言ってるような気がした。
 おばさんは一人で修二に全部を打ち明ける勇気がないと言ったので、私もそこに立ち会うことにした。修二はどういう反応をするんだろうか、とか色々なことをずっと考えていた。
 そして私とおばさんは修二の病室に入り、ベッドの横にあった椅子に腰を掛けた。
 椅子に腰を掛けると、おばさんが口を開いた。
「修二、あなたの病気のことについて話があるの。落ち着いて聞いてね」
 おばさんがそう言うと、修二は徐に窓の方を見た。
「お袋、今日も空が青く澄んでるな」
 修二はそれだけ言うと、黙り込んでしまった。そして、再び話し始めた。
「わざわざ言わなくても、何となく分かってたよ。いずれは絶対言われると思ってた。俺の余命は、そこまで長くないんだろ?」
 修二はとても弱々しい声で言った。修二の体は今や痩せこけていて、前みたいな面影は無くなっていた。そんな痛々しい修二のことを見てられず、私は修二から目を背けてしまった。
 そう言われたおばさんは、思わず泣いてしまっていた。私がここで泣いてしまったら、修二は生きる望みを無くしてしまうかもしれない、そう思い私は必死に涙を堪えた。そして、私はおばさんの代わりに話を続けた。
「修二の病気はもう末期状態で、余命はもっても半年らしい。でも、病気の進行状態によっては半年よりも縮む可能性もあるって」
 おばさんから聞いた事を全部修二に伝えると、修二は再び窓の方を見て空を眺めた。
「やっぱりか。薄々気付いていたよ、もしかしたら自分はもう助からないんじゃないかって。でも、ちゃんと言ってくれてありがとう」