君を愛する

 私は、「うん」と小さく頷き、今度は手を繋ぎながらまた歩き出した。
「彩香の親に挨拶するついでに俺たちが付き合い始めたことも報告しておくか」
「そうだね。修二が彼氏だったら、両親もきっと喜ぶよ」
「そうだと嬉しいんだけどな」
 修二は笑いながらそう言った。そして私の家に着き、修二を家に入れた。
「お母さん、修二連れてきたよ」
 玄関でそうお母さんを呼び、居間からスリッパで歩く音が聞こえてきた。
「あら、修二君。久しぶりだわね。今日はどうしたの?」
「彩香さんのことを家まで送るついでに挨拶をしようかと思いまして。それに、今日は夜遅くまで彩香さんに付き合わせてしまったので、ちゃんと御挨拶をした方が良いかと思いまして来ました」
「わざわざ律儀に挨拶までしなくてもよかったのに。今日はありがとうね」
 私の母親は笑いながらそう言った。そして修二は、本題の話を切り出した。
「挨拶もそうなんですが、あと一つお話があるんですよ」
「そうなの? じゃあ、玄関で立ち話もあれだから居間で座りながらお話ししましょう」
 母親は微笑みながらそう言って手招きをした。修二は、「ありがとうございます」とお辞儀をしてから靴を脱ぎ居間へと向かった。私もそれに続いて居間へ向かった。
「お茶でも入れるから、少し待っててね」
「おばさん、わざわざいいですよ。話自体はすぐ終わるので」
 しかし母親は、「良いのよ」と言ってお茶を入れ始めた。数分後お茶を持って母親がきた。「はい、どうぞ」と言って私たちの前にお茶を置いた。
「それで、さっき言ってた話っていうのは何なの?」
 母親は穏やかな声で聞いてきた。
「お話っていうのは、この度彩香さんとお付き合いさせてもらうことになりましたので、ちゃんと親には伝えなければいけないと思いまして」
 修二は緊張気味でそう言った。母親は最初ビックリしたような顔をしたが、すぐに安心したような顔に戻った。
「あら、そう。修二君なら安心だわね。でも、わざわざこのことだけに来なくてもよかったのに。修二君のことは信頼してるから」
「いえ、俺はこういうことはちゃんとしたいタイプなので。それに、昔から彩香さんの両親には面識があるので、それこそちゃんと直接報告した方が良いと思いまして」
「そう。ちゃんと修二君は育てられてきたのね。修二君なら安心だわ」