「なぁ、空。」

先生がいなくなった途端、
俺に話しかけて続ける男。

高野陸。

俺に話しかけるのは陸しかいないから、顔を上げなくても気配だけで分かる。

今、俺は本を読み始めたばかりだ。
読書中は邪魔してほしくないから、無視をする。

「おい陸ー…
そんなやつほっとけよー…。」

さっきから無視され続けてる陸を見た周りの男子から、呆れた声がかかる。
俺も同意見だ。

「…なぁ、そーらー。」

それでも話しかけてくる陸。

…しつこい。

「…何だ。」

何回目かの呼びかけに、
俺は若干イラっとしながら答える。

顔を上げると、
陸が嬉しそうに笑っている。