その話を聞いて、水月が言った。

「私達の前では素でいいですよ!」

「素が一番ですよ。」
私もそう言った。

「…ありがとう。」

そう言って笑った。

その笑顔は王子様の微笑じゃなくて、高校生の笑顔だった。

そっちの笑顔の方が良いなと思って、私も笑顔になった。

水月はまた赤い顔をしてる。

「いつからやってるんですか?」

「高校入学してすぐだから、もう慣れちゃってたんだ。
丁寧口調だから周りの人の風当たりも…一人以外は悪くないし。」

「そんなに長く続けているんですか…」

大変だったんだろうなぁ…。

「じゃあ、お言葉に甘えて、三人だけの時は楽させてもらおうかな。
まぁ、長く演じ続けたせいか、
あまり変わらないかもしれないけど。」

「「大丈夫です。」」

私と水月の言葉がハモった。

「ははっ、そっか。
じゃあ、よろしくね。」



そうして、一年生じゃ誰も知らない秘密を共有して、私達は陸先輩の家を出た。

白猫も灰色の猫も可愛いけど、
私は黒猫といると落ち着くかなぁ。

水月とさよならをしてから、
そんなことを考えて歩く。

外は薄暗くなっている。
家の前につくまで、キーホルダーをお守りとして手に持った。

家に入る前に、今の空をキーホルダーで切り取る。

「あっ…。」

キラキラ光る一番星、見つけた。