椿さんは空くんで、あの有名な松本空先輩だった。

私は静かに驚いた。

「多分、何処かで気づいてました。
本当に気づき始めたのはさっきだったけど。」

椿さんを好きになった理由も空くんと同じだと思った時。
『ろくなやつじゃない』って椿さんが言った時。

もっと前にも、不思議に思いつつ見逃した何かがあったかも。

「それまでは空くんが椿さんだったら…って思ってました。」


「…今日まで全く気づいてなかったんだ。俺は海のこと知ってたけど?」

「うっ…それは…」

今日の、水月のニヤニヤと言葉の意味にも全く気付かなかった。

確かに水月にとって、こんな面白いことはなかっただろうな。