空き教室で待つあたしの耳に届いた声。

「呼び出したのはお前か。」

その言葉に悪魔か何かを召喚した気分になる。

それもそのはずだよね。

誰も近寄らない、あの空先輩を、
あたしは呼び出したんだ。

「そうです。
あたしは海の親友の板野水月です。」

「名前は北野から聞いてる。」

「そうなんですか。」

「用は何だ。」

「単刀直入に言います。
あなたが知ってるみー君は、
昔のあたしです。」

「…は?」

当時の写真を渡す。

Tシャツに短パンで、花屋の店先でモンシロチョウをつかんでいる短髪の子。

それがあたし…
典型的な男の子の姿だ。

正直、あの頃の写真はあまり見せたいものじゃない。


「何であたしと海が付き合ってると思ったんですか?」

少しの間沈黙が流れた。

「…手を繋いで…家に行った。」

「あたしの家はここに写ってる花屋で、よく花を見せてました。
それと、友達だからです。」