海ちゃんが戻って来るのを、幼い俺は待っていた。

「空、もう行くぞ。」
お父さんが車で来て、声をかけられた。

「やだ!もうちょっと!」

「我儘言わないで、早く乗りなさい。」
今度はお母さんに声をかけられる。

結局無理矢理乗せられて、
そのまま隣町に向かった。

待ってて!という海ちゃんとの約束が守れなかったのが、とても悲しかった。

それから新しい町で友達も出来た。

だけど、海ちゃんを忘れたことはなかった。

他の女の子と仲良くなっても、
海ちゃんはあの頃の俺にとって特別だった。

最初は分かってなかったけど、
これが恋なんだって、後になって気づいた。


海ちゃんに会いたい。

今度海ちゃんに会ったら、海って呼ぼうかな。

そんなこと、
考えるだけで楽しかったな。