「こーんなやつ、知らない?
『そらくん』♪」

「…!」

ふふんと笑う陸の手元を見て…少し焦ったのが自分でも分かった。

「本当は実物を今の空くんにみせたかったけど、海ちゃんの宝物だからね。」

陸のスマホには、クローバー型のキーホルダーが映っていた。

「海ちゃんの初恋の相手って、空でしょ?」

さっきから君付けで呼んだのはこういう意味か…。

悪戯が成功した子供みたいな、勝ち誇った顔で笑う陸を、睨みつける。

気づいていない。
後ろに仁王立ちする鬼がいることに。

「痛っ!暴力反対…って先生!」

陸がガタッと立ち上がる。

一番怖い保健体育の先生が、陸に軽くチョップをしたのだ。