「…君、朝ぶつかった子だよね?」

話しかけてきた方を見ると、
男の先輩がいた。

話の内容から、朝ぶつかった先輩だと思って、身構える。

けど、先輩は何も言わないから、
私から先に話しかけた。

「朝はぶつかってすいませんでした。」

私は慌てて頭を下げる。

「え……あぁ、
いいんだ、気にしないで。」

頭を上げて、と狼狽えて大げさに手を振って私よりも慌ててる先輩。

思わずクスッと笑ってしまった。

笑ってから、失礼だったかもと思い、
慌てて口を押さえた。

「…よかった。笑った。」

だけどそんな心配は必要なかった。

先輩は優しい笑顔を向けてくれた。

それはとても温かくて、気持ちが落ち着くような笑顔だった。