天体観測

「これからは少し家族の話をしたい」

「なんだ?」

「復縁する気ないの?それぐらい真面目に考えてみてもいいんじゃないかな?母さんだってまんざらじゃないようだし」

「考えたこともないな。そんなこと」

「どうしてさ」

「母さんには彼氏がいる」

僕は前のめりになって父さんを見た。顔は至って真面目で、嘘を言ってるとは思えなかった。

「聞いてなかったのか?」

「僕から言ってもはぐらかされてた。それに『私の夫はあなたの父親だけよ。後にも先にも』って言ってたから、いないものだと思ってたよ。父さんはいつ知ったの?」

「五年前だ」

「母さんが浮気してたの?」

「浮気とは違うらしい。真澄曰く、『元の鞘に戻った』らしい」

「きれいごとじゃないか」

「そうだな」

「だから離婚したんだ」

「関係ないとは言い切れないな」

「それ以上の要因があるの?」

「お前だよ」

「僕?」

「これ以上一緒にいたらお前が俺みたいなる。そう言われたんだ」

「その時点でもう手遅れだった」

「真澄にはそんなことは関係なかったらしい。口実だったのかもしれないけどな」

父さんはビールを置いて、椅子にかけてあったジャケットスーツをとりあげて、苦笑をうかべながら玄関に向かった。

「どこ行くの?」

「今日も当直だ」

「そう。いってらっしゃい」

「まあ、単に俺の力量不足というか、性根のせいだ」と言って、父さんは家を出た。