天体観測

「そんな身も蓋もない答えありかよ」

「ああ」

「……」

「…………」

待ってましたと、沈黙が僕らを支配する。周りの人々の声すら、僕の元には届かない。完全な沈黙。まだ五時にもなっていないはずの僕らの明るい世界が、単色無音の闇に包まれる。

「それって、何か深い意味でもあんのか?」

しばらくして、村岡が言った。人の流れは、まだ止まっている。

「どうだろうな」

「何かあるんやろ?」

「きっとさ……人類にとって、宇宙の外側のことがわからないことも、雲と星の間を確認したことがないことも、等価なんだよ。知りたくないんだ。そこに何があるか。サンタクロースの存在が、実は父親だったり、ブラウン管の中では東京を破壊している怪獣が、実は自分たちとそんなに変わらない大きさだったりするのと一緒なんだ。未知だからいいんだ。たしかに現実は、子供を大人に変えていく。けど、そんな大人は、ろくでもない奴らばかりだ。本物の大人っていうのは、何もない答えに、現実に、立ち向かっていくような人間なんだよ」

「つまり……何が言いたいんや?」

「村岡は、立派な人間だ」

「どう見ても、立派な人間やろ」

「俺が知っているどんな大人よりも、立派だ」

「気持ちの悪いこと言うなや」

村岡が、そう返事をするまでに随分と時間がかかる。

「お前には、俺が何を言いたいか、わかってるよな」

僕の質問に、村岡は答えない。黙ったまま、他の人とは対照的に、俯いている。