天体観測

通信を断った後、僕も恵美の様に走って、三人の所に向かった。

人の流れが、どんどん西に向かっている。そこに何かがあるのか、それとも何もないのか、僕らには知る術もなかった。

「この賑わいは何?」と、僕は隣を歩く村岡に聞いた。

「何でも、往年の名選手が来てるらしいぞ」

「何の?」

「野球」

「大阪府民の県民性……府民性か。それって野球か、芸能にしか向けられないよな。みんなを見てると、つくづく思うよ」

「他にも、もっとあるやろ。商売とか」

「商売に興味がない人なんていないだろ。県民性以前の問題だよ」

「じゃあ……情に厚いぞ。知らんおばちゃんでも、飴とかくれるし」

「それはあるかもな」

そのとき、僕らの遥か頭上で、もの凄い破裂音がした。後を追うように、歓声と、どよめき、それに少しばかり耳障りな怒号。前を歩く恵美と雨宮が、空を仰いで、何かを言い合っている。けれど、僕らは、空を見上げたりはしなかった。見上げたくないわけじゃない。見上げてはいけない気がする。あの刹那の輝きに、囚われてはいけない。

「なあ」

「何や」

「雲の上には……何があるんだろうな」

「それ、俺が足立に聞いたことやぞ」

「いいから、どう思うんだよ」

「わからんって言ったやろ」

「本当に?」

「しつこいぞ」

もう一度、この祭りで鳴るはずのない音が、空を支配した。また、誰もが空を見上げる。人の流れが完全に止まる。必然的に僕らの動きも止まる。

「きっと、そこには何もない。それが答えだ」