天体観測

車に戻った僕は、とりあえずクーラーの出力を全力にして、汗が止まるのを待った。けれど、一向に止まる気配がなかった。冷や汗が止まらないのだ。おまけに、頭の痛みは、まだまだ僕を苦しめようとしている。

形はどうあれ、僕は二人分の人生計画を破壊した。それがたまらなく怖かった。こんなことを仕事だからと割り切れる、警察に少し尊敬したりもした。けれど、まだ、本命が残っていた。本当につらいのは、神目薫が言うように、ここからなのだ。それを思うと、気が遠くなる。吐き気がする。

僕は、それらすべてを我慢して、家に向かった。

門のところに、恵美が立っていた。いつから立っていたのか想像も出来ないくらい、恵美は日に焼けていた。僕はガレージに車を停め、恵美のところに急いだ。

「顔色……悪いよ」と、恵美が心配そうに言った。

「恵美こそ……顔色が悪い」

「司よりマシやわ」

「お互い悪いさ」

お互い一歩近寄って、恵美が僕に身体を預けてきた。僕は重い両腕をあげて、すっぽりと恵美を包み込んだ。

「冷たいで。身体」

「怖い思いと、つらい思いをしてきたから、びびちゃってるんだ」

「何があったん?」

「一言じゃ説明できない。中で話をするよ」

「うん」

離れようとする恵美を、より強い力で押さえつけた。

「痛いって」

「もう少し、このまま」

恵美は何も言わずに、また身体を僕に預けた。

僕らを横切る人はいなかったけれど、例えそういう人がいたとしても、関係なかった。何分も、何時間でも、こうしていたい気分だった。身体に勇気と気力が戻っていくのがわかる。夏祭りまでは、あと五時間ほどあった。