僕の中の何かが、勝手に言った。言いたくなかったわけじゃない。思いついていなかったわけじゃない。でも、僕には言う気なんてなかった。でも、それはもう、空気の振動となり、神目薫の耳の中に入っていた。
昔から、誰かに懇願するのが嫌いだった。協力はしてもらう。でも、教えを請おうなんて思ったことがなかった。唯我独尊なんて言葉がぴったりかもしれない。そんな僕が教えてくれと懇願している。今までにこういうことがなかったわけじゃない。自分も知らない、未知に領域に出るときは誰かに導いてもらった。でも、それはあくまで一つの手段だった。入り口は教えてもらう。出口は自分で探す。そのための手段だった。今回は違う。迷ってしまった。おそらく、一本道で。僕はその答えを知っているのに、聞いている。わかっているのに尋ねている。
「どうしようもないわね」
神目薫が言う。突き放すように。惹きつけるように。
「あなたは知っているもの。答えを。それが出来ないでいる自分が可愛いだけなのよ。これが自分だって勝手に思い込んでるだけなのよ。きっと、深層心理ではそれを否定しているのにね。なまじ利口な分、限界がすごく狭い。自分の限界が、相手の限界だと思ってる。神様はそんなところだけ平等になんてしない。何でも不平等なの」
神目薫の言葉が、頭の中で繰りかえされる。自分が可愛い。限界がすごく狭い。何でも不平等。僕には否定が出来なかった。そう、まさしくそうなんだ。世界の基準は僕じゃない。そんな当たり前のことが、わかっているようでわかっていなかった。僕は誰でもなく、僕なんだ。隆弘だって言っていた。「人間は利己的なんだ」と。僕は肝心なところで利己的になれていなかった。そういうことなんだ。
「具体的に言ってあげるわ」
神目薫が続ける。僕の涙はもう乾いていた。
「やればいいのよ。身を置けばいいのよ。自由価格競争すればいいの」
神目薫はそういうと、久しぶりにコーヒーを口にして、「簡単なことよ」と付け加えた。
昔から、誰かに懇願するのが嫌いだった。協力はしてもらう。でも、教えを請おうなんて思ったことがなかった。唯我独尊なんて言葉がぴったりかもしれない。そんな僕が教えてくれと懇願している。今までにこういうことがなかったわけじゃない。自分も知らない、未知に領域に出るときは誰かに導いてもらった。でも、それはあくまで一つの手段だった。入り口は教えてもらう。出口は自分で探す。そのための手段だった。今回は違う。迷ってしまった。おそらく、一本道で。僕はその答えを知っているのに、聞いている。わかっているのに尋ねている。
「どうしようもないわね」
神目薫が言う。突き放すように。惹きつけるように。
「あなたは知っているもの。答えを。それが出来ないでいる自分が可愛いだけなのよ。これが自分だって勝手に思い込んでるだけなのよ。きっと、深層心理ではそれを否定しているのにね。なまじ利口な分、限界がすごく狭い。自分の限界が、相手の限界だと思ってる。神様はそんなところだけ平等になんてしない。何でも不平等なの」
神目薫の言葉が、頭の中で繰りかえされる。自分が可愛い。限界がすごく狭い。何でも不平等。僕には否定が出来なかった。そう、まさしくそうなんだ。世界の基準は僕じゃない。そんな当たり前のことが、わかっているようでわかっていなかった。僕は誰でもなく、僕なんだ。隆弘だって言っていた。「人間は利己的なんだ」と。僕は肝心なところで利己的になれていなかった。そういうことなんだ。
「具体的に言ってあげるわ」
神目薫が続ける。僕の涙はもう乾いていた。
「やればいいのよ。身を置けばいいのよ。自由価格競争すればいいの」
神目薫はそういうと、久しぶりにコーヒーを口にして、「簡単なことよ」と付け加えた。


