天体観測

「無慈悲よね……神様って……」

「え?」

沈黙を破った神目薫の呟きに僕はなんとも情けない返事をする。でも、これが今の僕の全力だった。

「あなたの言いたいこと、すごくわかるわ。こんな意義すらわからない試練を与えて、どうするつもりなのかしらね。こんなことで簡単に人間が成長すると本気で思っているのかしら?乗り越えたら強くなると、本気で思っているのかしら?だとしたら神様ってかなりのバカか、とんでもなく残酷な存在よね」

僕は返事が出来なかった。泣いているからじゃない。言葉が見つからない。肯定すべきなのか、否定するべきなのかもわからない。だから僕は、ただ神目薫を見ていた。

「つらいわよね。神様に見放された存在っていうのは。きっとこの神々しいお方は楽しいものにしか興味を示さないのよ。だから私たちのような、社会主義者みたいな考えた方の人間には興味がないの。そうでしょ?試合が始まる前から引き分けが決まっている試合なんて誰も興味なんてないわ」

「僕は社会主義者なんかじゃない。自由価格競争もどんどんやればいい」

僕はわかりきっている言葉を口にする。今のこの空間には相応しくない、とんまな言葉。僕にはわかっていた。けれど、このまま神目薫を肯定することは釈然しなかったんだ。

「そんなのわかってる。でも、不平等って言葉はそういう意味じゃないかしら?みんなに、均等に、幸せを。そんな人生面白くもなんともないわ。一人が死んだら全員死ぬの?私の父親が逮捕されたから世界中の父親と呼べる存在が逮捕されるの?」

「それは少しずれてる」

「平等の幸せにはアンチテーゼとして平等の不幸を与えなくちゃ、平等なんて言葉恥ずかしくて使えないわ」

誰に対して恥ずかしいの。という言葉が出掛かった。けれど、それを呑みほして、僕は代わりの言葉を探す。容易には見つからない。容易に見つからない言葉を僕は探す。いっそこのまま脳内で死んでしまってもいいんじゃないだろうか。誰にも迷惑をかけないし、ある意味、死に方に美学があるならば、最も美しい死に方ではないだろうか。脳内自殺。死因は生きる気力が尽きました。ご臨終です。

「じゃあ……僕はどうしたらいい?」