天体観測

「じゃあ何のためにこんなことしたのよ」

「少し協力してほしいことがあるだけですよ」

「協力……」

神目薫は悲しげな瞳で天井を見上げる。僕はその神目薫を見る。

彼女越しに見る外の風景は、さっきよりも、ずっと涼しそうに見える。

「いいわ。協力してあげる」

「ありがとうございます」

「ただし、一つ条件があるわ」と、言って神目薫は人差し指を立てた。

「何ですか?」

「どうして私がいけないことをしたってわかったの?いくら直感っていっても、そう思わせる要素があったはずよ」

「それを説明するのが条件ですか?」

「ええ」と、言った神目薫の目は何故か輝いていて、僕はソファを離れて五つ星レストランにあっても違和感のないテーブルについた。

「まず、最初に怪しいと思ったのはこの家に入るときです。何故だかわかりますか?」

「そういう質問形式はいらないわ。早く言ってちょうだい」

僕は頭を掻いて、続けた。

「あまりにもすんなり受け入れ過ぎたんですよ。普通、何のことかわからない人間だったら最初に出る言葉は疑問のはずです。当然でしょう。見に覚えがないんだから。でも、あのときあなたは用があると言った僕に対して、『待ってて』と言いました。それでおかしいと思ったわけです。普通なら『何用ですか?』とでも言うはずでしょう?」

「あなたは私が何か考えたとは思わなかったの?疑問を口にするべきかどうか考えたとは思わなかったの?」と神目薫は両手を広げて言った。

「思いませんでした。仮に思っていたとしても、あなたと話しているうちにその考えは消えていったはずです」