天体観測

「薫さん。あなたは首都圏の大学に行っていませんでしたか?」

神目薫は怪訝そうな様子で頷いた。

「一応、東京の私立大学に通っていたわ」

「なら、当然下宿してたわけですね」

「ええ」

「本当なら、ご両親に聞いてほしいことだったんですが……」と、僕はもったいぶる。正直に言って、ここからは僕の直感で話さなければならない。しっかりと言葉を選ばなければ、墓穴を掘ることになりかねない。

「仕送りなどはもらっていましたか?」

「当たり前じゃない」

「でも、あなたはその仕送りを使ってなんかいなかった」

神目薫が僕から目を逸らし、息を吸い込む。下唇を軽く噛む。そして、あからさまに動揺して、言った。

「使ったわよ。そんなことあなたが知っているわけがないじゃない」

「見てしまったんですよ」

「え?」

神目薫から表情が消えた。顔にある起伏すら、なくなる。僕が今まで見たことのない表情だ。

「東京で。あなたを」

「何処で?」と、言った神目薫の声は震えている。

「僕は大阪の人間なので東京の詳しい地名なんてわかりません」

「確証がないわ」

「そうです。確証はありません」

「じゃあそれが私かどうかなんてわからないわ」

「それがですね。わかるんですよ」

神目薫の顔に明らかな不安が広がる。僕は少しの罪悪感を覚えたけれど、続けた。

「あなたの髪です」