戦場派遣

【まだ死にたくない】


【やらなければ、やられる】

【殺すのはよくない】

【殺せ】

【殺すな】

【殺せ】

【殺すな】




【生きるんだ】


「まだ死にたくない!」

杉山は右手だけを狼から離し、地面に置かれていたサバイバルナイフを拾った。

狼の左前足の爪が杉山の顔を斬りつける。

次の瞬間、杉山は右手に握られたナイフを狼の腹部に突き刺した。

狼の腹部から血が吹き出た。

狼は体がのけ反り、杉山から離れもがき苦しんだ。

狼の頭を左手で地面に押さえ込み、ナイフを狼の目に突き刺した。

一回、二回、三回…

なんども動かなくなるまで刺し続けた。

しばらくして、狼は動かなくなった。


「はぁ。…はぁ。こ、こうするしかなかったんだ。こうするしか…。」


殺すことでしか、自分が生き残ることができない事に、杉山は悔しさのあまり唇を噛み締めた。


男の死体と同じように横たわる狼をみて、杉山は泣き崩れた。