「懐かしいですねぇ、いや。
本当に懐かしい」
と言って、
側に設置されている
新しいと見える水道口から
水を出し、桶を埋めていく。

音にかき消されてしまう程、勢いの無い声であったが
どんな読経より
有り難みがあると思えた。

やがて、柄杓を使い、大海から僅かな
水を月明かりに照らしながら

墓石の上から、すっと
ゆっくり 時間を掛けて流していく。

それを繰り返しながら、また
懐かしんで言った。