「へーここ?」


「うん。本当にごめんね」


「いや、別にいいけど…」



「いらっしゃいませ」



と、もの静かな店員の声を聞きながら、あたしはグルッと視界を巡らす。



「えっと、どれにしようかな?」



さりげなくお目当ての場所に足を向ければ、後ろから追ってくる足音にあたしはニヤリと顔が歪む。



「彼、ここのブランドが好きなの?」


「そうなの。実は来月彼の誕生日でね。ここの財布を送ろうと思ってたの」


「ふ~ん」



ショーケースの中に飾られている財布を見渡しながら、あたしはやっぱり笑顔を向ける。