あたしはあえて何の反応もしなかった。
ただ飛び交う会話に相槌を打ち、素知らぬ顔を付き通すあたしはきっととてつもなくスッキリとした表情をしているに違いない。
……けど、内心可笑しくてしょうがなかった。
まさに想像通りの展開。
その姿がまるで鮮明に思い浮かぶように、彼女の様子が目に見えるようだからだ。
それからあたしは友人達と別れ、駅の改札口を出た。
もうすぐ真夏だというのに、長袖のカーディガンは欠かせない。
それはまだ彼から与えられた痛々しい傷痕がしつこく残ってるせいだった。
今思いだしてもゾッとする。
まだ時々夢にまでうなされるほど、あたしの心に受けた傷はべったりと張り付いたまま当分消えてはくれなさそうにはない。



