「ちっ、手間かけさせやがって、人が優しく笑ってやってんのにその態度はねぇだろ?」
両手を拘束されたまま、顎を持ち上げられたあたしは恐怖のあまり口も動かせない。
「だいたい何で逃げる?俺に何をされてもいいって言ったのはお前だろ?あんなに嬉しそうに俺のキスに応えてたじゃねーか!」」
――あ
その言葉にゴクリと息を飲む。
確かに、言った。
酔っぱらい、気持ちが高ぶっていたとはいえ、自分の発言した浅はかさに今更ながらに後悔する。
「女っていつもそうだよな。少し気に入らないことがあるとすぐ掌を返したように態度を変える。あいつも……、凛子も、他の女も全てそうだった。俺の気持ちを伝えれば伝えるほど嫌だ怖いと言って逃げようとして……」
「―――」
「いったい俺の何が気に入らない?何で俺の気持ちから目を背けようとする?」
「そ、れは……」
あなたがこんな異常な行動をするから!
そう言いたかったけれど、とてもじゃないけど口に出すことなんてできない。



