人のモノ…


「美華、顔を上げろ」


――まるで別人。

さっきまでの爽やかな笑みはどこにもない。


……この人が都築、くん?

そう錯覚してしまうほどいつもの穏やかな雰囲気は崩れ落ち、見たことのない冷やかな形相であたしを鋭く睨んでいた。



「おい、聞いてるのか?」

「―――」


恐怖で声が出ない。

なんとかして体を動かそうとしても、強い力で抑え込まれていて指先一つ動かせない。


「なんとか言えよ」


バシッ――
と次の瞬間右頬に強い衝撃を受けて、あたしの瞳からはポロポロと恐怖の涙が零れ落ちた。


「…っ……!」


それは生まれて初めて叩かれた頬の痛みだった。

恐怖に怯えたあたしはただただ涙を流し、唇を強くかみしめる。