顔が近づいてきて頬に生ぬるい唇の感触がした。
そしてそのまま耳元に緩い息がかけられて、ドキリとする言葉をかけられる。
「君は俺のモノだ。絶対誰にも渡さないよ。これからはここで、ずっと2人だけで甘い時間を過ごしていくんだ」
力強く抱きしめられる。
そのままこめかみにキスが落とされたあたしは瞬きもできないほど体を硬直させた。
――逃げなきゃ。
そう思うのに、体が固まったように動かない。
今まで味わったことのない焦りに、情けないほど目の前の彼の肩を唖然と見つめることしかできなくて
「美華、愛してるよ」
や、だ…
「君は永遠に俺のモノだ」
こんなの普通じゃない。
ゆっくり体重をかけられて、ベッドに押し倒されそうになった瞬間、あたしは一瞬の隙を見計らって手錠をはめられた両手を彼の頭めがけて大きく振り上げた。



