人のモノ…


「もしも……」

「ああ、美華私だけど、元気してるの?」


電話の声は母親だった。

一週間ぶりに聞く母親の声にああ、と思わず頷いたあたし。


「来週法事があるから帰ってきなさい」


用件はそれだけ。

そう言って、相変わらず一方的に電話をきってしまった母に若干苦笑い。

たまらずふ~と息を吐き、背もたれに深くもたれかけた瞬間、でも、すぐにある違和感に気付き、あたしは再び携帯の電源を入れ直した。




「―――」


ない。

やっぱり、ない。


「何で…」


あたしはハッと眉を歪めながら何度も同じ操作を繰り返す。

だって、登録してあった母親の番号がどこにも見当たらない。

ううん。それだけじゃない。

その他男友達の番号、そして女友達、行きつけのエステの番号や服のお店。

登録してあった全てのデーターが綺麗さっぱりなくなっている。






「美華」


ある、一人の名前だけ残されて…