「あたしは騙されないから!」
信じてたまるもんですか!!
「そんなバカバカしい話し……」
「ふっ……、騙されない、ね?そうね、あたしも初めはそうだったわ。今思いだしてもゾッとする。あの甘いルックスと優しげな笑顔にまんまと騙されたんだから」
タンクトップを元に直し、凛子の顔が無表情に変わる。
さっきまで晴れていた空が急に陰りをみせて、所々に雲が顔を出し始めていた。
「あれは2年前。あたしの一目ぼれだったの。そして今のあんたと同じようにあれやこれやと彼を誘惑したわ。そして彼と気持ちが通じ合って一緒に暮らすようになったけど………でも、それが大きな間違いだった。だってその結果がこれよ。
後悔してもしきれない。彼の独占欲は異常なのよ!」
凛子の声が強くなった。
そしてあたしの手を素早く掴み、どす黒い殺気で睨みつけてくる。
「本当、地獄だった…。この1年生きた心地なんてしなかったわ。だってあたしの人格なんて全て否定された。あたしの意思なんて彼には邪魔でしかないんだもの。あいつの思い通りにしなきゃ罰をあたえられる。叩かれ、蹴られて、危うく首を締められて殺されかけたこともあったわ!」
「―――」
「それがどんなに地獄だったかあなたに分かる?」
「―――」
「逃げたくても逃げられない。逃げても逃げても彼は追ってくる。そんな恐怖があなたに分かるわけがないわよね?」
「で、でも、いつも仲良さそうにしてたじゃない!」
「あんなのは見せかけよ!ああでもしないと外にも出してやもらえない。お金だって全部あいつに管理されて……。うちの母だってね。あの男のせいで大けがをさせられたんだから!」



