人のモノ…


「都築くん……」

「はっきり言って焦ったよ。自分の気持ちに気付いた時、まさか美華をこんな風に思う日がくるなんて思ってなかったから……。実際何度も諦めようとしたし、俺には凛子がいるって。一緒に同棲だってしてるし、この先ずっと一緒にいるもんだとばかり思ってたから…」

「でも…、あたしを好きになった?」

「ふ…。完敗だよ。人の気持ちって案外簡単に変わるんだな。それとも俺の運命の相手が凛子じゃなかったのか。
どっちにせよもう引き返せないとこまできたのは確か。
もう、自分に嘘はつけない。
それが例え、凛子を傷つける結果になったっとしても俺は美華が好きだ。
美華以外の女はいらない。それが俺の今の気持ちだから…」


都築くんの手があたしの肩を持って、ゆっくり顔を覗き込んできた。

それは真っ直ぐで、だけど切なそうに揺れる彼の瞳。

あ…

なぜかそれを見た瞬間今まで感じたことのない締め付けがあたしの胸を襲い、瞬きさえ困難な状態になった。


「悪い。引いた?」


少し弱々しくなった彼の瞳…

まさか。

そんなわけ、ない。


あたしは顔を両手で覆い、歓喜余った素振りで顔を大きく横に振った。