人のモノ…


ふっ…

本当あほらし。自分でもこんなバカ正直なことよく言ってるなって思った。

言いながら、これっぽっちも罪悪感なんて浮かんできやしない。

むしろ快感。

凛子の悔しそうな顔を想像しては、心底嬉しさが込み上げてくるんだもの。


「西條さ…」

「都築くんのバカ!あたしの気持ちも知らないでこんな風に抱きしめるなんて酷いよ!あたしがどんなふうにいつも都築くんの側にいたと思って…っ」


瞳から大粒の涙をこぼす。

あたしは勢い余り、彼の手を振り解いた。

だけど、すぐにその手は彼の手に掴まえられて…


「待って、違うんだっ」

「何が違うのよ!今の状況でそう思われてもしょうがないでしょ!?どう考えてもあたしは……」

「凛子とは別れるから!!」


鋭い視線とぶつかって、再びグイっと抱きしめられた。

都築くんのいつになく真剣な声が頭上に響き、あたしの勢いは止められる。


「凛子とは別れる。ちゃんとけじめはつける。だから少し落ち着いて、こっちを見て、俺の話しを聞いてほしい!」


荒々しい声に部屋中の空気が静まりかえる。