人のモノ…


そしてその日はあたしにとって最高の日になろうとしていた。



「ご馳走さま。美味しかった。――ね、次どこに行く?」


「うん。そうだなぁ……なんならこのままもう一軒行かない?」


「え……もう一軒?」


「ああ。知り合いの先輩が働いてるバーなんだけどさ。そこが凄い雰囲気が良くて。凛子も今日は帰りが遅くなるって言ってたし、西條さんさえよかったらどう?行ってみない?」


「本当!?わー行きたい!行く!ぜひそこに連れてってっ!」


「はは。うん。じゃあ、いこっか」



にっこり笑い、嬉しそうに歩き出した都築くんにパァーっと目を輝かせたあたし。


やばい。嬉しい…


思わずテンション高く、きゃっと左の手を掴んでしまった瞬間、あたしはハッとした。




だって、


……なぜか、その手は振り払われることはなく、ぎゅっと握り返されてしまったから…