「待たせた」
少し急いで校門へと向かうと、座り込んで待っていた隼人が素早く立ち上がって、変わらない人懐っこい笑顔を向けてくれる。
「いえ!お疲れ様です!」
「急に迎えに来るとかどうしたんだよ」
「瑠榎さんに、今の黒龍を見てもらおうと思って!」
「今の、黒龍」
「はい!」
キラキラした目を見ていられずに目線を逸らした。
変わっている黒龍を見るのが怖い。
変わってしまっていたら戻れない。
私は…あの場所に戻りたいんだ。
「見てから、戻って来てくださるかの返事をください」
急に優しいトーンになった隼人をみると、見たことないくらい優しい目をしていて思わず驚いてしまった。
「お前…」
「え?」
いつも通りに戻った隼人に小さく息を吐いた。
「なんでもない。ほら、行くんだろ」
「あ!待ってくださいー!」
私の後ろを追いかけて来る隼人が、さっき一瞬だけかっこよく見えてしまったのは何かの間違いだな。