「さ…」



A組の教室の中に朔の姿を見つけ、声をかけようとしたけど同じクラスの女の子達に囲まれて何か言われているみたいだったから、思わず止まってしまった。



「なぜ、D組の方と関わられるのですか?」

「A組でないと話しかける事すら許されないはずです!」

「蘭帝の皆様があのような方とご一緒されると、蘭帝の名が汚れてしまいます」



口々にうつむいたままの朔に詰め寄るような言葉をかける女の子達。



「朔」

「っ!瑠榎…」



たまらず声をかければ、泣きそうな顔をこちらへ向けた。


その顔をみて、私は大きくため息をついてから教室の中へと足を踏み入れた。



「ちょっと!あなた!A組に許可なく入らないで!」

「うるせえな。てめぇに用はねぇんだよ」

「!?」



近寄って来た女の子を睨み、驚いたように立ち止まった隣を通り過ぎる。



「なんか、色々と朔に言ってたけどさ。それは朔が決めたの?」



朔に近づきながら周りにいた女の子達に話しかける。



「蘭帝って事だけで朔も來輝くんも悠斗も遠巻きにしか見なくて、朔が本当に悩んでることも知らないくせに。好き勝手言ってんじゃねえぞ」

「なっ!?」



朔の前に立って囲んでいた4人と向かい合う。



「憧れって言うなら、その人自身をちゃんと見ろ。泣きそうな顔させてんじゃねえよ」



私の言葉に驚いたように目を見開いてから、次は私を睨んで来た。