お医者さんにも診てもらい、注意事項などを言われ、傷口が塞がるまでは入院と言われた。


「瑠榎。今まで本当にごめん」


頭を下げてくれるお兄ちゃんに私はうん、とだけ返した。


「俺が巻き込んだのに、瑠榎に1番辛い思いさせて…」

「でも、護ろうとしてくれたんでしょ?」

「当たり前だろ」



勢いよく顔を上げて即答してくれたお兄ちゃんに笑ってみせた。



「それだけでいいよ。無力だった私を護ろうと必死で、1人で頑張ってくれたお兄ちゃんを責めようとは思わないもん」



両親がいなくなって、私が記憶を失くして、誰も頼れなくて。

1人で現実を受け入れて対応しようとして。


私がしっかりしてれば、少しは違う未来があったかもしれないと思うと、お兄ちゃんを責めることなんてできなかった。



「ありがとう」

「なんでお前がお礼なんか言うんだよ…。俺のセリフだろ…」



お兄ちゃんのかっこいい顔に涙が伝って、私はなんとか手を伸ばしてお兄ちゃんの涙を拭った。



「瑠榎…ありがとう」

「どういたしまして」




また2人で笑える日が来た。

それだけで、私は十分幸せだった。